医療福祉の税務情報
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文書作成日:2022/09/15


 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行してから、国や地方公共団体などから様々な補助金が交付されています。「事業復活支援金」もその1つです。このような国や地方公共団体から、法人が補助金や助成金など(以下、助成金等)の名目で支給を受けた場合の税務上の収益計上時期について確認します。


 法人が受け取る国や地方公共団体からの助成金等については、法人税法上、個人事業者とは異なり、非課税となるものや課税となったときの所得区分判定は不要で、原則、収益として計上(=益金として算入)します。つまり、法人税等の課税対象となります。

 なお、消費税は課税対象外となるため、消費税はかかりません。これは個人事業者も同様です。


 法人税法上、収益計上する時期は、原則として「その収入すべき権利が確定した日の属する事業年度」となります。そのため助成金等については、原則として「その助成金等の支給が決定された日の属する事業年度」に、収益として計上することとなります。

 ただし個人事業者と同様、その助成金等の交付目的について次のいずれかに該当するときは、それぞれの時期に収益として計上することとなります。

@経費補填に充てるために交付を受ける場合

 助成金等が、経費を補填するために法令の規定等に基づき交付されるものであり、あらかじめその交付を受けるために必要な手続をしている場合には、「その経費が発生した日の属する事業年度」に収益として計上します。

 これは、補填する経費(費用)と助成金等の収入(収益)の計上時期が同じ事業年度になるようにする、つまり個人事業者での取扱いと同様に、費用と収益を対応させるためです。

A固定資産の取得又は改良に充てるために交付を受ける場合

 助成金等の交付目的に適合した固定資産の取得等をした場合(その事業年度終了の時までに助成金等の返還を要しないことが確定した場合に限る)で一定の要件を満たすときには、その固定資産の取得等に充てた助成金等の額に相当する金額(圧縮限度額)の範囲内で、その固定資産の帳簿価額を損金経理により減額するなどの一定の処理(圧縮記帳)をした場合には、その圧縮記帳をした金額は、その事業年度の損金として認めてもらえます。

 個人事業者での処理は、収入に計上しない代わりに固定資産の取得価額から控除して処理をしていました。

 法人の場合には、助成金等を収益として計上しつつ、圧縮記帳により費用等として計上することで相殺するような処理を求めています。

【例】いずれも同一事業年度内に行われて、確定通知も同事業年度内にあった場合
(条件)
  1. 交付決定・入金 200
  2. 対象資産取得 180
  3. 圧縮限度額 120
  4. 対象経費支出 80
(仕訳例)
  1. [交付決定・入金]現預金 200/補助金収入 200
  2. [対象資産取得]資産 180/現預金 180
  3. [圧縮記帳]圧縮損 120/資産 120
  4. [経費支出]経費 80/現預金 80
※資産に係る減価償却費は、60(180−120)を基に計算することとなります。

 なお、その事業年度終了の時までに助成金等の返還を要しないことが確定しなかった場合には、その事業年度での圧縮記帳は認められないため、翌期以降に繰り延べる処理を行います。

 冒頭でご案内した「事業復活支援金」は、事業収入等の減少を補填するものであるため原則的な取扱いとして、個人事業者と同様、「その助成金等の支給が決定された日の属する事業年度」に収益として計上することとなります。

 以上のように、法人における税務上の取扱いにおいて収益として認識する時期は個人事業者と変わりませんが、上記Aのように考え方は同じでも処理方法が異なる場合もあります。いずれにしろ、助成金等の交付を受けた場合には、法人であっても個人事業者であっても、ケースごとで税務上の取扱いが異なるため、注意が必要です。

参考:
国税庁HP
国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ


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